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各店のよもやま話

各店のよもやま話

◆正岡子規のひと悶着◆

朝 雑炊3椀、佃煮、梅干、菓子パン2個、牛乳1合ココア入り
昼 鯛の刺身、粥3杯、みそ汁、佃煮、梨2つ、葡萄酒1杯
 朝から猛烈な食欲をみせるある大食漢の献立ですが、実はこれは明治34年(1901)9月4日、亡くなる1年ほど前の正岡子規の食事なのです。当時、子規の肺はすでにほとんどが空洞だったというのですから、この食事量はいよいよ尋常ではありません。食事、病状、来客……著作『仰臥漫録』には子規の日常が、克明につづられています。さて、朝、昼にこれだけ食べても、子規はおやつを欠かしませんでした。この日は当家の羽二重団子4本(あん3本、醤油1本)に塩煎餅3枚、麦湯1杯、茶1杯!そして記述には「芋坂団子を買来たらしむ(これに付悶着あり)」という1行が出てきます。団子を買いに行け、行かないで妹とやりあったようなのです。多食が生の証でもあるようにむさぼり食べる子規と、過食の後はいつも吐き気や腹痛に苦しむ兄を見ている妹の葛藤を、異色の日記は小説よりも雄弁に映し出しています。ところで、団子屋は果たしてそうした事情を知って売っていたのか……。当店の記録には何も残っていないのが残念です。




だんご
●羽二重団子
●荒川区東日暮里5-54-3
●03(3891)2924


◆食通の食べ方◆

 ある日、お客様から「いつもの煎餅と違う」とのお小言をいただきました。実は長く勤めた職人が退職したばかり。味覚の鋭さにドキリとしながら詳しくお話をうかがううちに、そのかたが変わった召し上がり方をしていることを知りました。なんと、煎餅を買ったら袋を開けて3日程おき、わざと湿気らせて召し上がるというのです。その湿気具合が違うとのお小言だったわけです。人それぞれの召し上がり方があるわけですね。名文章家にして大美食家として知られる内田百 も、決まりきった食べ方が嫌いでした。例えば、お からはスプーンの背で押して小山の形に固め、酢やレモン汁をかけて、しばらくおいてから食べたそうです。 変わった食べ方もあるものです。  煎餅の話に戻りますと、当店の主は、醤油味のあられや揚げ煎餅をくだいて、ご飯に混ぜたり、味噌汁に入れて食べるのを好物としています。ヤキソバに入れてもよく合うと……。えっ!この方が変わってますか?




煎餅
●銀座 松崎煎餅
●中央区銀座4-3-11
●03(3561)9811
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