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- 『小泉八雲が愛した音』&『小都心温暖化と衣替え』
◆小泉八雲が愛した音◆ ラフカディオ・ハーン、後の小泉八雲が2カ月の滞在予定で来日したのは今から110年程前のこと。日本の美しさに魅せられたこのイギリス人は、やがて帰化し、14年後に彼が愛してやまなかった日本で亡くなります。 「日本の下駄の音というのは履いて歩くと、カラン、コロンと、ふたつのことばが違う程度に、どれも少しずつ違った音を立てる……」 和服と正座と煙管を好み、障子の明かりが差す日本家屋に住んだ彼は、日本の音にも耳を澄ませています。 下駄――。 木の台に3つの穴、そこに1本の紐を通しただけの世界一シンプルで機能的なこの履物は、足指やアキレス腱を鍛え、自然に姿勢を正します。また、鼻緒をはさむ親指と人差し指の間には運動の微調整をつかさどる脳幹と小脳を刺激するツボがあり、歩くだけでツボを押す健康法にもつながるともいわれています。 最近は少女たちが花火大会やお祭りで浴衣を着るようになって、かえって中年・熟年の方のほうが下駄離れをしているようにも思えます。 「日本に、こんなに美しい心あります。なぜ、西洋の真似をしますか」と言い続けた八雲。日本の心を思い出すべきは、大人の方かもしれません。 履物 阿波屋 ●中央区銀座7-2-17 南欧ビル2F (地下鉄新橋駅から徒歩10分) ●03(3571)0722 |
◆小都心温暖化と衣替え◆ 太宰治の著書のなかに、衣替えの季節になったけれど単衣(ひとえ)が無く、奥様が袷(あわせ)の着物をほどいて洗い張りし、単衣に縫い直したという話がでてきます。6月から9月までは単衣、10月から5月までは袷というのが着物の一応の決まりごとなのです。 しかし、最近の都心の暑さは異常です。真夏並みの暑さの日でも袷を着て、汗をかいているかたをお見かけするたびに、ひと昔前の決め事に無理に合わせる必要はないのではないかと呉服屋は考えます。たかが着るものです。体が一番心地よいと感じるものを着ることこそ、大切なことではないかと。 衣替えは、平安時代には4月1日、5月5日、8月15日、9月9日、10月1日の5回、江戸時代には4月1日と10月1日に行われていました。衣替えの日は、当時の気候や人々の暮らし方に沿って決められてきたのです。 この30〜40年で都心部の気温は3〜4度上昇したそうですし、実際、真夏日の銀座は、すぐ近くの日比谷公園と比べて2〜3度高いという話も聞きました。また、今年4月には環境省が100年後の年平均気温は南日本で4度、北日本で5度上がるという予測を公表しています。衣替えの日が変わるのも、そう遠い未来のことではないかもしれませんね。 特選呉服 銀座 越後屋 ●中央区銀座2-6-5 (地下鉄銀座駅から徒歩4分) (地下鉄三越前駅A8番出口すぐ) ●03(3563)5691 |