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各店のよもやま話

各店のよもやま話

◆楊枝の旬◆

 「くろもじ」というと、生菓子に添える楊枝のことを指すと思っておられるかたも多いようですが、くろもじというのは、植物の名前です。
 日本では北海道以南に分布するクスノキ科の落葉低木で、樹皮に黒い模様があることからクロモジと呼ばれています。クスノキから樟脳を採取するのはよく知られていますが、シナモンやクロモジなども含めて、この仲間は枝葉に芳香性の精油成分を含んでいるのが特徴。クロモジが菓子楊枝はもちろん高級品のつま楊枝に使われるのも、このほのかな香りが古来より好まれているからです。
 クロモジ製の楊枝の特長はそれだけではありません。しなやかで歯あたりがよく、弾力性に富んで折れにくく、ささくれることもありません。そして、皮の茶色と対照的な緑白色の肌。
 楊枝には賞味期限がありませんから比べる人はまずいないと思いますが、実は伐採したて、削りたてのクロモジは芳香も素晴らしければ、色も透明感のある美しい色をしているのです。
 クロモジを楊枝用に伐採するのは、木が葉を落とし、養分が茎に貯えられている11月から2月末にかけてです。クロモジの楊枝を買うなら、色も香りもすがすがしい春が旬。くれぐれも買いだめはしないことです。




楊枝
日本橋さるや
●中央区日本橋小網町18-10
●03(3666)3906


◆七味いろいろ◆

 全国どこのご家庭にもある七味唐辛子。でも、使われている七つの材料に地域性があるのをご存知ですか?
 七味唐辛子は寛永2年(1625)に当店の初代が売り出した日本独自の調味料です。お陰様で七味唐辛子は大人気となり、全国へと広まっていきました。京都の「七味家」さん、長野の「八幡屋磯五郎」さんも、こうして誕生した老舗です。そして、当店の七味が江戸庶民の味として普及していったかけそばに合わせてピリッと辛みの効いた風味を特長としたように、それぞれの店がそれぞれの土地の料理に合う七味を作ったのです。3店の七味に共通して入っている材料は赤唐辛子、粉山椒、黒ごま、麻の実の4種だけ。あとの3種が違います。七味家は青海苔、白ごま、しそ。八幡屋はしょうが、陳皮、しそ。そして、当店のものは生赤唐辛子とは別に焙煎した焼き唐辛子を入れ、陳皮、けしの実を加えています。
 最近は、かつて売上げの8割を占めていた”中辛“が6割程度にまで減り、代わって”大辛“が伸びてきています。地域性よりも、日本人全体の食べ物の嗜好が大きく変わりつつあるということでしょうか。




七味唐辛子
やげん堀 中島商店
●台東区浅草1-28-3
●03(3626)7716
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