★ゑ ◆江戸開府300年を、どう祝ったか?
平成15年すなわち2003年は、徳川家康が幕府を開いて(1603)ちょうど400年目。さまざまな催しが企画されていますが、では、江戸開府300年のときは、どうだったのでしょう。
江戸開府から300年というと1903年ということになりますが、祝賀の催しが行われたのは、徳川家康が江戸に入った年(1590年)から数えて300年を迎える年の前年、1889年(明治22年)でした。
その名も「東京開府三百年祭」。この年は2月に大日本帝国憲法が発布された年でもありましたが、同年の8月26日に、上野公園で盛大な催しが開かれたのです。
イベントの企画者・賛同者は、前島密ら旧幕臣を中心に、実業界、芸能界、政治家など各界の有力者の面々。委員長には榎本武揚、委員には政治家をはじめ渋沢栄一、岩崎弥之助、大倉喜八郎らの実業家も顔を揃えました。
入場券は1枚1円。芝生の広場には各国の旗章が上げられ、来賓席は江戸城の宮殿を模した装飾。江戸町火消しの名残をとどめた消防夫のはしご乗り、猿若狂言、競馬、獅子手古舞、近衛軍楽隊の奏楽、鍵屋の花火など、にぎやかな催しが続きました。また、このイベントとは別に、都内各所でも様々なお祝い行事が行われたようです。
こうして「東京開府三百年祭」は盛大に幕を閉じました――と話は終わりたいところですが、もうひと言。祝典の背景には、失われつつある江戸への回顧と、旧幕臣たちの鬱積した感情があったというのが、このお話のオチとなります。 |