最新情報 東都のれん会とは 各店のご案内 店舗所在略図 老舗の知恵袋 お問い合わせ リンク サイトマップ トップページへ

各店のよもやま話

各店のよもやま話

◆プロのメイクは、道具が違う◆

 メイクアップアーティストにお化粧をしてもらったときはキレイに仕上がったのに、自分でやると上手にできない……。そんな経験はありませんか? 「やはりプロのテクニックは違う」と感心してしまえば、話はそれまで。でも、プロは、使う道具も違うんですよ。
 たとえばチークブラシひとつとっても、使用される天然毛はリス、黒ヤギ、馬のものなどさまざま。最高級品のリスの毛を使ったものは、ビロードのような触感でありながら、適度なハリやコシがあります。だから、頬紅が肌の上にふわりとのり、なめらかに広げることができ、さらに余分な粉をはらうのにも適しているんです。でも、化粧ケースにセットされているブラシでは、こううまくはいきません。最高の仕上がりを望むのであれば、プロと同じ厳しい目で、道具も選ぶ必要があるんです。
 ところで、いまお話した最高のチークブラシには、江戸時代の職人たちが工夫を重ねて練り上げ、伝えてきた刷毛(はけ)を作る技術が受け継がれています。
 友禅を染めるのに使う染色刷毛、漆器にうるしを塗るうるし刷毛、見事な錦絵を刷りだす木版刷毛、ふすまを張る経師刷毛……。江戸職人がそれぞれの道具の用途によって毛の素材を選び、毛先の形を考え、使い心地を追求し続けた工夫と技術は、いま、化粧道具などはもちろんのこと、何ミクロンの単位で精査を要求される工業用ブラシなどにも生かさているのです。
 現代の東京に江戸の面影をたずねるのは容易なことではありませんが、身近な小さな道具のなかに、江戸が息づいている――そんなお話を申し上げました。
刷毛・ブラシ
江戸屋
●中央区日本橋大伝馬町2−16
(地下鉄小伝馬町駅から徒歩2分)
●03(3664)5671

挿絵



◆永代橋のたもとで◆

 当店は、元禄元年に永代橋のたもとで創業。以来、三百余年、この場所で商いを続けてまいりました。長い月日の間にはさまざまな事件があり、西郷隆盛、勝海舟といった方々との出会いも、この橋のたもとの地で生まれたもの。本日は、そんななかから永代橋にまつわるお話を、もう少し。
 最も象徴的な話といえば、赤穂浪士が吉良邸討ち入りのあと当店で甘酒粥を飲んで一服し、永代橋を渡って泉岳寺へ向かったというエピソードでしょうか。異形の浪士たちを迎え入れたのは、初代と赤穂浪士の一人、大高源吾が俳諧を通じた友であったことに加え、この日がたまたま棟上げ式で、早朝から店の者が揃っていたということがあるようです。偶然といえば、偶然。できすぎかもしれません。しかも、大高源吾が看板を書き置いていったことで、当店はしばらく江戸の名所の一つとなってにぎわったそうです。その後、赤穂浪士の話が歌舞伎「忠臣蔵」となり、現在まで語り継がれているのはご存知のとおり。
 もう一つ、永代橋といえば、文化4年の富岡八幡宮大祭の日に落橋し、500人とも2000人ともいわれる多数の死者を出した事故がありました。将軍家が船でお参りすることになったため、橋の手前では船が通過するまで交通を遮断。そして、通行止めがとかれた途端、橋のたもとにいた人々がどっと押し寄せ、その重量に耐えかねて橋が落ちたのです。この出来事もまた、歌舞伎や落語になりました。事件や大惨事を歌舞伎や落語に仕立てたのは、悲劇を別の形で悼み、また、話を楽しみ、笑うことで、明日へのエネルギーに替えようとする江戸っ子の知恵だったかもしれません。
 江戸時代の永代橋は、もちろん木製の橋。現在の場所よりも150mほど上流にあったそうですよ。
味噌
ちくま味噌
●中央区日本橋大伝馬町2−16
(地下鉄小伝馬町駅から徒歩2分)
●03(3664)5671

挿絵
戻る