「秋色庵大坂家」の創業は元禄年間(1688〜1703年)。初代が大坂から江戸に上り、明治27年までは日本橋小網町に店を構えていました。しかし、火事や地震や、戦災に何度も遭って、現在の地に移転したのが昭和の初め。店がつむいできた長い歴史の間には、苦難の時代もあったんですね。
さて、この店と桜のかかわりですが、お話の主人公は、この店のご先祖さまで、元禄時代を生きた1人の少女です。
少女は近所に住んでいた有名な俳人・宝井其角に俳諧を学び、「秋色(しゅうしき)」という号を名乗っていましたが、13歳のときに詠んだ句「井戸端の 桜あぶなし 酒の酔」が親王さまの目に止まって、これが大評判になりました。
さらに、老中の屋敷に招かれた日の帰路、下賜された籠を途中で降り、お付きの者として同行した父親を乗せたことで、秋色の親孝行は江戸中の話題となり、講談になり、人気浮世絵師が錦絵に描くまでになったのです。 |