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老舗の知恵袋

老舗のコンシェルジュ
江戸東京BRAND 老舗のコンシェルジュ
 
今月のお品書き
【第十一回目】
 
銀座 越後屋:呉服屋さんは着物の「セレクトショップ」です。
 
 いらっしゃいませ、老舗のコンシェルジュです。今日はどのようなご相談でしょう。
「いい着物が一枚ほしいんですが、自分で着物を買うのは初めてなので……」。
かしこまりました。それなら一度、銀座中央通沿いにある“銀座 越後屋”をのぞいてみられたらいかがでしょう。
銀座 越後屋は、宝暦5年(1755)創業と伝えられる、呉服の老舗です。2代目の時、京橋の伝馬町から現在の場所に移り――当時は、店の目の前に銀貨の鋳造所(つまり銀座)がありました――、以来260年。まさに、銀座でも随一の老舗といってよろしいかと存じます。
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イメージまずはウインドー・ショッピングから。じっくりご覧になってください。展示されている着物や帯が、お客様が考えているものとは種類が違ったり、着る年代層が違ったりするかもしれませんが、それはこの際、気にしないでいただいて。
たとえば小さな柄にでも、あるいは全体の雰囲気にでも「きれい」「かわいい」「素敵」と思うものがありますか? ご自身のセンスと合いますか?……。実は、これが大事。つまり“呉服屋さん”というのは、セレクトショップなんです。そう考えれば、あとは洋服のセレクトショップでお買い物をするのと同じです。発掘する楽しさはもちろんのこと、互いに感性を磨きあうようなお付き合いだってできるでしょう。
 
ちなみに、これは私の感想ですが、この店の着物は淡いきれいな色合いのものが多いのですが、ただ優しいだけではなくて、どこかにキリリと理知的な色柄が入っている……そんな感じがします。江戸好み、というよりも銀座越後屋の好みというべきなんでしょうね。銀座の気品、華やかさ、しとやかさ、あでやかさ、清楚さ……あ〜、着物のイメージを言葉で表現するのはとっても大変!
あとは、どうぞ皆さんの感性でご覧になっていってください。
 
イメージそうそう、一つ言い忘れておりました。今回は「初めてのお着物」ということで、このお店をご紹介したのですが、それは老舗だからこそ安心です、という意味もあったのです。というのも、老舗は、何十年、何百年と「初めてのお買い物」のお客様団子の画像とおつきあいしてきたんですから、緊張も不安もお見通し。妙な背伸びをする必要もありません。
また、こういうものこそ、最初にいいものを見ていただきたいという気持ちもあります。不思議なことに、着物や工芸品などの日本の美は、見るたびに目が肥えていくのです。だからこそ最初が肝心。最近「自分へのご褒美に」と着物を買う方が増えているようですが、1枚の着物を買うまでに得る知識や、日本の美や技と出会いこそが「贅沢」かもしれませんね。
老舗は、創業からの長い時間をつむぎながら、未来の時間をも保証しています。着物とも老舗とも、ゆっくりおつきあいしていく――そんなつもりで、暖簾をくぐってみてください。