羽二重団子は、文政2年(1819)の創業です。場所は、日暮里駅から線路沿いの道を東に歩いて5分ほど。現在は東日暮里という少々味気ない住所になっていますが、その昔は“根岸”と呼ばれて皇族をはじめ、文人や芸術家、学者などが集まる閑雅な別荘地として知られていたところです。ビル造りですが、そこだけポンとやわらかな日がさしているようなたたずまいですから、すぐにおわかりになりますよ。 お店に入ると、入り口近くに売店、奥に庭を配した喫茶室がありますので、どうぞお好きな席へ。まずは一服なさってください。お煎茶とのセットを頼むと、漉し餡の団子と、生醤油の団子の2本の串団子が運ばれてきます。お茶もたっぷり急須ごと。 餡の団子も醤油の団子も、まん丸の団子ではなく、少し平らに押してあります。4つずつ、竹串で刺してあって、一見、いかにも下町風。けれど、じっくり眺めれば、その姿かたちが、実にしみじみとした風情を持っていることに驚かれるでしょう。“素朴”をきわめた気品、とでも申しましょうか。