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【第五回目】 |
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鳥安:ただ一つのメニュー「あい鴨のすき焼き」で120余年 |
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メニューを開いて「さて、今日は何を食べようかな……」。ずらりと並ぶ献立にあれこれ悩むのも、食事の楽しみの一つですね。
でも、今回おすすめの“鳥安”に、メニューはありません。献立は、ただ一品「あい鴨のすき焼き」のコースだけ。つまり、この店には、これを目当てに行く。逆に言えば、この一品を楽しみに、両国橋の南西畔にある店をめざすのです。
鳥安は、明治5年の創業。以来、130余年も「あい鴨ひとすじ」を貫いています。たった一つのメニューで今日まで続いているということは、それだけこの料理がおいしい証拠! それと同時に、まさしく4代の主人たちが、精進を重ねてきた証拠といえるでしょう。
いつの時代も、最高のあい鴨を探し続け、炭一つ、鍋一つにもこだわり、時代に合わせた工夫をし続けることは、言うにたやすく、行うは難し。
2005年に、店を建て替えると聞いた時も、風情がなくなるのではと心配していましたが、いらぬ心配でした。それどころか、新しいお店は、老舗らしいたたずまいの中に、新しく椅子席が設けられ、お座敷も掘りごたつ式に足が下ろせるようになって、いよいよ粋で、贅沢で、快適な店になりました。 |
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さて、コースのご説明をいたしましょう。
まずは、お通し。季節の酒肴が、美しい5点盛りで出てきます。続いて鶏団子が入ったお吸い鍋、「とりわさ」。手のこんだお料理に、お酒が進むこと請け合いです。
そして、頃合いを見計らって、備長炭をおこしたコンロと、「あい鴨のすき焼き」に使う鉄鍋が運ばれてくると……初めて行った人は、目が釘づけになりますよ。「これ、何?!」って。分厚い鉄鍋の一部に、不思議な楕円形の「くぼみ」があるんです。
お教えしましょう。この鍋の「くぼみ」、その第一の役目は、鴨肉から出た余分な脂がここに落ちるんです。 |
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さらに、この「くぼみ」は、鴨の脂がたまってきたところで野菜を入れると、揚げるように短時間で焼き上げることもできる。
ちなみに、この鍋を考案したのは、初代。明治維新からたった5年。当時のハイカラな食通たちも、このアイデアには仰天して拍手喝采したでしょうね。
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さあ、いよいよ、鴨肉がのった大皿が運ばれてきて、真打ち登場。分厚く切られた皮付きの胸肉、もも、ささみ、はつ(心臓)、レバー、砂肝、そしてきれいな挽肉! 春菊、葱、しいたけ、ピーマンと、野菜もたっぷりです。好みの焼加減でジイジイ焼いて、おろし醤油でさっぱりといただきましょう。
お味、ですか? これだけお話して、味の説明までするのは、やぼというものでしょう。
税・サービス料込みで10,000円。必ず、「安い」「うまい」と言っていただけることと存じます。 |