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細田さん、こんにちは。今日からしばらく細田さんが感じておられる月々の話を聞かせてください。まずは秋らしいところで……紅葉の話なんていかがでしょう? |
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(細田) |
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紅葉の話?! これは、しょっぱなから難しいことを言ってくるなぁ。
だって、ちょっと考えてごらんなさい。京都で紅葉の名所といえば、嵐山があり、大原や高雄があり、東山がある。京都は町の三方を山が取り囲む盆地にできた町だから、秋になると山々が色づいて、まさしく錦繍が取り囲む感じになるよネ。
ところが、東京は広い平野のなかに出現した町だから、近くに山がない。紅葉狩りって言ったって、箱根か日光か、それとも塩原か……なんて遠ーくまで行かなきゃならない。だから、江戸っ子は花見は大騒ぎするけれど、紅葉のことはあんまり言わないんだよね。
私は菓子屋だから秋になれば紅葉のお菓子も作るけど、京都の方がずっと華やかで派手な色づかいだろ?東京はぐっと控えめで、「紅」のほかに、いちょうや武蔵野の雑木林などに見られる「黄」もある。
お菓子は、京都が育んできた都としての長い歴史と、そこで育まれてきた文化に負うところが多いんだけれど、紅葉のお菓子の色の違いなどを見ていると、そもそも京都と東京では自然が違うのかなって思うんだよね。 |
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地形や気候、自然の違いが、文化に、たとえばお菓子にも現れている、ということですね。 |
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(細田) |
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そう。京都は四季の移り変わりが目に見えるかたちではっきりある。だから、着物の色柄にしても雅・綾・錦の多色で、花鳥風月の文様など自然からもらった具象・リアリズムが生きている。
一方の江戸は、春は桜があるけれど、紅葉は名所もないし、冬も雪がどっさり降るわけでもない。だから自然よりも祭りや行事、そして人が、興味の中心になるんだね。
たとえばお菓子も、大福や金鍔に代表されるように、おいしくて、エネルギーになるものが好まれたし、着物は紺・藍・茶・ねずみ色などの単色で、縦縞などの抽象柄……。
それぞれの都の風土、自然が、文化に与えた影響はとっても大きいんじゃないかと思うんだ。 |
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なるほど。この話、まだまだ奥が深そうですね。じゃ、続きはまた来月。よろしくお願いします。 |