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第1回は、澤島さんの学生時代のお話。水道橋にあった「スイング」で、スイング・ジャズやデキシーランド・ジャズに出会ったところまでをお伺いしました。 |
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(澤島) |
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はい、上野の「イトウ」が僕のジャズのふるさとなら、「スイング」はジャズの学校でした。
いい店でね。デキシーランド・ジャズに関しては図書館級のコレクションを持っていたし、木曜日の夜は若いジャズメンたちの練習場として店を開放していた。残念ながら1991年の秋に閉店しましたが、全国からファンが別れを惜しんで集まって……。テレビでも放映されたので覚えておられる方も多いかもしれないね。
ともかく、友人に誘われて、ここに通うようになったことで僕はモダン・ジャズからクラシック・ジャズのファンに転向、ジャズにのめり込むようになったんです。そして、そう
した流れなかで生まれて初めて出かけたジャズのコンサートが、1964年のデューク・エリントンの初来日コンサート。 |
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いかがでした? |
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(澤島) |
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実は、ガラガラの入りでね。僕も「キャラバン」という曲しか知らないで行ったんだから他人のことは言えないけれど……。
だけど、その音楽にはびっくりした。「これまで聴いていた音は、なんだったんだ!」
って。世界がぜんぜん違う、と背筋が震えるほど感動した。で、それ以後はエリントンの来日コンサートはすべて行ったし、赤坂のナイトクラブに出演すると聞くと、そっちにも行ったり。
3回目の来日コンサート(1970年)のときは、自然気肺にかかって医者から絶対安静と言われてたんだけど、どうしても行きたくて寝台自動車呼んで厚生年金会館の建物のかげまで連れてってもらってね。帰りも来てもらって。 |
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とんでもない “追っかけ”ですね(笑)。 |
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(澤島) |
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そして、エリントンのレコード・コレクションも始めた。いや、コンサートのあと、どんなレコード出しているんだろうと調べたら、普通のミュージシャンとは桁違いの100以上のレコードタイトルがズラーッと並んでいる。で、金がないわけじゃないから、「こんちくしょう。じゃあ、全部集めてやろうじゃないの」って(笑)。 |
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現在までで、何枚くらいのコレクションになっているんですか? |
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(澤島) |
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エリントンのコレクションはレコードが270枚、CDが170枚くらい。もちろんん、ダブり無しで。 |
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すごい! しかし、それだけ夢中になれるエリントンの音楽の魅力って何なんですか? |
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(澤島) |
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そう、実はそれなんだ。エリントンの音楽的評価はバラバラなんだ。ピアノの腕にしても上手いという人もいれば、下手糞だと言う人もいる。サウンドが泥くさいという批評も多いしね。しかし、僕はこの人の音楽は、音づくり、サウンドというよりハーモニーが素晴らしいと思っているんです。
ピアノにしても、彼の弾き方は“間をつなぐピアノ”。音楽のアンサンブルの間をつなぐ音なんだ。たとえばトリオで演奏しているとして、彼は自分がピアノを弾くことで、ほかの演奏者をちょっと休ませて、準備させて、さあ次は君!とバトンタッチするような演奏をする。その“間”づくりの巧みさを、僕はほめたくなるわけ。テクニックの上手い・下手を超えたところに魅力があるんだと。
このハーモニーづくりのうまさは、育ち良さから来ているのかもしれないね。彼は、お父さんがホワイトハウスの執事という裕福な家庭で育ったいわゆるお坊ちゃんなんだよね。だからこそ小さい頃からピアノを習うこともできた。黒人のジャズミュージシャンのプロフィールにありがちな苦労話とは無縁の人なんです。
お金はあるし、スタイルはいいし、ハンサムだし、会話はウイットに富んでいるから女の子にもよくもてるし、お酒も強いし。で、75歳で大往生。ちなみに、昭和天皇と同い年で、今年は生誕110年です。 |
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育ちの良さが、わがままなミュージシャンたちをまとめてビッグバンドを率いる力になり、ハーモニーづくりの基にもつながっているのかもしれませんね。。 |
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(澤島) |
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私は、ほぼ同時代のスウィング・JAZZ界の巨星カウント・ベーシー(1904-1984)との違いを、落語家の文楽と志ん正に例えてよく話をする。つまり、カウント・ベーシーの音楽は志ん生の落語のように演奏するたびに雰囲気が変わる楽しさ、一緒にスイングしながら聴ける楽しさがある。一方のデューク・エリントンの音楽は、桂文楽の落語のように、ちょっと背筋を正して聴くような印象があって、ただいつ聴いても同じ上手さで感嘆させる、と。 |
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なるほど! それにしてもジャズメンを語るのに、落語家を例に出されるとは。 |
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(澤島) |
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実は、中央大学の落語研究会、作ったのは、僕。 |
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エエーッ! では、次回は、そのあたりもちょっと聞かせてください。楽しみにしています。 |